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タマラのロマンス小説

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 ミスターリッチのきまぐれ 30 誘惑の演技 2
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誘惑の演技~江成いちこ先生コミカライズ

誘惑の演技 1

 
 ミスターリッチのきまぐれ 30 誘惑の演技 2
 オパール・ハーディングは若者が集まるイギリス、ロンドン中心部にあるバーの片隅でシェリー酒を飲んでいた。
冷静に周囲を観察し、バーの中で酒を飲んだり、踊ったり、ダーツをしている若い男女の視線や、視線以外のものが絡み合う姿を眺め、ああはなりたくないとため息をついた。騒々しい音楽と薄暗い照明、欲望と刺激と退屈と退廃に満ち溢れたこのバーで、毎晩、目的をもってこのバーへ通っているはずなのに、その目的を断念したくなる。

 しっかりしなさい、オパール、貴女はこのバーにいる時は奔放な美女シルビアを演じているはずなのよ。シルビアになりきるために黒いショートヘアのかつらを被り、セクシーな胸元と長い脚を組んでみせ、身体の線があらわれる黒いドレスを着ている。

 そしてさらに豊満な胸の谷間を更に強調するために、胸元にダイヤモンドの縦に長いネックレスを付け、ドレスに合う光沢のある黒く高いヒールを履いている。

 煙が漂う淀んだ空気の中、目の端で二人組みの男性を捉えた。彼らは昨日、私に声をかけてくれてダンスに誘ったけれど、丁重にお断りした。彼らは元々、私の好みのタイプの男性ではない。

 しかし私に好みのタイプ男性などというものが存在するのだろうか?私の心の中で導き出した結論は世の中の男性は全て嫌いだという結論だった。

 私は女優で、三歳の時に子役タレントとしてデビューし、六歳の時に両親が離婚。母のソフィーは私を捨て、現在ではスコットランドの男性と結婚し、幸せな家庭を築いている。父のマイクは私のマネージャーをしていたが、私が十八歳の時に、私の貯金を持ち逃げして若い女性と失踪した。現在、私は二十二歳。そして差し迫った問題を抱えている。
三歳の時から女優として活動し、清楚で愛らしく、穢れを知らない娘を演じて十九年、その役柄が限界に来ている。

 父、マイクの失踪とともに大きな事務所へ移籍したが、仕事内容が以前から出演している連続ドラマ以外はほとんどない事実に気付いていた。そのドラマもあと数回の撮影で降板になる。おまけに先月、天然素材のシャボンの匂いのシャンプーのコマーシャルの専属契約も切れたし、清楚なイメージだけでは女優業を続けて行けない。
 
 真剣な気持ちで女優をしている中、役柄になり切るためにスコットランド語、ウエールズ語、アイルランド語など、細かい語句を自然と身に付けていたが、仕事中心の日々でろくに学校にも通っていない私は女優を廃業すると生活に困ることになる。

 女優という仕事は出演依頼があって初めて成立する仕事。出演依頼が先細りである今の状態では将来、他の道を歩まないといけないという自覚を持っていた。

 自分の今後を冷静に分析した。私は今まで清楚なイメージの役しか求められたことがない。例えばセクシーな役でもこなせれば違うのかもしれない。世間の私のイメージは未だに白いレースの服を着て微笑んでいる従順な娘だ。今、シルビアになりきっている服装など求められたこともない。

 そう決意して、このバーの椅子に座っているが、テーブルの奥の席で女性の身体に手を這わせている男性を目撃した途端、寒気がした。私がシルビアになりきるには無理がありすぎる。恋愛経験のない私がセクシーな女性の役を練習するなんて、まるで昨日産まれた赤ちゃんに歩けと命じているようなものだ。

 私が二度目のため息をついたときに、昨日の二人組みの男性が声をかけてきた。

「やあ、ハニー。今日こそ一緒に踊ってくれるよな」

「駄目よ、ダーリン、私、酔っ払っちゃって脚がふらふらなの」

 彼らに流し目を送ろうとしてやめた。だめよ、この人たちは本気にしてしまう。この現状にジレンマを感じた。私はセクシーな女性を演じきれていない。瞳に熱のようなものがこもっていなく、気持ちも下がりっぱなしだ。私にセクシーな演技は不可能なんだわ。セクシーな女性は淫らな流し目を男性に送り、その気にさせ、更に男性の誘惑を巧みに退けるテクニックも持っているのよ。

 バーにいる自分以外の女性は全てそのテクニックを身に付けているような錯覚に陥り、気が滅入ってくる。

 一方、男性二人組みは私の気持ちを無視してしつこく誘ってくる。彼らをさりげなくかわしながら視線を反らすと、バーの入り口の扉を開けて、バーの中へ入ってきた男性に視線が釘付けになった。

 ここのバーの客にしては、この場にそぐわない雰囲気を匂わせている彼。背が高く百八十センチ以上はある身長に、黒く光る鋭い印象の瞳、黒く流れる癖のある艶やかな髪、広い肩幅に引き締まったウエスト、黒いデザイナーズブランドのスーツを身につけている。明らかにオーダーメイドと思われる靴を履いていて、ハンサムというよりも粗野な顔立ちで高い鼻に意志の強そうな顎、肉感的な唇が印象的である。

 彼は真っ直ぐ歩いて私の席の近くへ来た。一人でこのバーに来たらしく、バーの中をつぶさに観察している。私に一瞥を向けただけで、興味がないようにウオッカを注文して飲んでいる。

 彼に焦点を当ててある結論に達した。とてもいい標的だわ!相手にその気がないほうが口説きやすいもの。もし断わられても、本気ではないから心は傷つかないし、いい演技の勉強にもなる。

「ハニー、聞いているのかい?ハニー」

 二人組みの男性の一人に話しかけられ、テーブルの上を見ると私の目の前には新しいシェリー酒が置かれていた。

「まあ、このシェリー酒はどうしたの?」

「僕達のおごりだよ」

「ありがとう。でも貴方たちとは別れないといけないの。私のダーリンがやっときたのよ」

 にこやかに微笑んで見せると、男性二人に別れの印とばかりにウインクをして、奢って貰ったシェリー酒を持ち、先ほどの男性の方へ近寄った。


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