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タマラのロマンス小説

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 アラビアンナイトに煌めいて 8 アラビアンナイトに煌めいて 10
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アラビアンナイトに煌めいて~高木裕里先生コミカライズ~

アラビアンナイトに煌めいて 9

 
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「アル・ファールド国でお酒は禁じられている。バーがあるとしても酒は置いていないし、僕は飲まない」

「水で充分よ。お気に入りの水があるの」

「これのことか?」

「ボトルの社名の所が丸いガラスを分厚く貼り付けていて可愛いでしょう。帰国したら店の花瓶にしようと計画しているの」

 不機嫌な表情をしたラシードに庶民の話がまずかったのかと感じ、横を向いて窓の黒いカーテンを少しだけ開けた。

「眩しい、焼けるようね」

瞳を細めて眺めた後、カーテンを閉めた。

灼熱の太陽に照らされた砂丘と岩、アスファルトを敷いた道路と交通標識以外は砂と砂混じりの風が青く透き通った空の中で揺れている。

じっと、わたしの姿をラシードがみつめていたので、照れくさくなり、ボトルの水を飲むと、何を話していいのか考えてしまう。

後ろに段ボールを運んでいる車もあるけれど、積み切れなかったのね。段ボールがなければ広々とした空間なのに、バーの前の座席しかスペースがなく、ラシードはわたしの隣に悠然と座っている。

急カーブとともに体が段ボールの方へ倒れようとすると、ラシードがわたしの肩に左手を置いて支えた。

「最初からこうすれば良かった。この方が安全だろう」

安全ですって!

肩にあった左手がわたしの腰に置かれて、体が傾かないようにしているけど抱きしめられているみたい。

 親切心でしているのか、それとも。

 どうして断れないのだろう。

 彼の腕にすっぽりと収まっている感覚は心地よくて、自然と彼の肩にもたれたくなる。

 ぶっきらぼうで威圧感あるのに女性の扱いに長けているのかしら。

誰にでもこういうことをしているの?

答えを知りたくない。

俯いたまま黙りこんでいると、ラシードがわたしの飲みかけていたボトルの水を飲み干して、空になったボトルを備え付けのダストボックスに捨ててしまった。

「持って帰るつもりだったのに」

「持ち帰るのを忘れて捨ててしまったよ」

「ボトルは帰国前に買えばいいから構わないわ」

神妙な表情でわたしを見つめるラシード。庶民感覚に疑問を覚えたのかしら。

「もうすぐ、孤児院へ着くから準備しよう」

「特に用意することなんてないわ」

「あるよ」

 見当がつかないまま様子を伺っていると左手首を持ち上げて、わたしの左の薬指にはめた。

「そこまでする必要があるの?」

「宣伝も兼ねているから、婚約者と仲良く過ごしていますという雰囲気にしないといけないし、そのつもりで居て欲しい」

「わたしはどんなことをすればいいのかしら?」

「微笑んでスイスシルクを配ればいいよ。それに僕のことは、これからラシードと名前で呼んで構わない」

 シークを名前で呼んでいいの?名前で呼ぶなんて、何故か少し照れくさい。

「どうしよう、わたし、アラビア語が話せないわ」

「英語で話せば通じるよ。ここの孤児院の者は語学を学び公務員として就職している。特に女性は家にいるものという我が国の習慣では、貴重なスタッフとして活躍しているよ」

ホテルのフロントの女性がそうなのかしら?入国までにシルク商品を売買する際のアラビア語しか覚えてこなかった自分が恥ずかしい。

「国によって文化が色々あるのね」

「反対の声もある。この国には色んな部族が居て、女性は家の中で暮らし、男性は結婚時に持参金を必要とし、家柄の釣り合った者同士で結婚するのが主だ」

「それで、あなたもロフサーネと?」

「・・・・・・そうだ」

 聞いてはいけないことだったのかしら?シークだもの、事情があるはず。ラシードがはめた左の薬指の指輪を抜いたわたしは、ラシードの手のひらに指輪を乗せた。

「どんな事情であれ、結婚相手以外の女性の左手の薬指に指輪をはめることは良くないわ。わたしもそうだもの。愛し合って結婚する男性から貰った指輪をはめて貰いたい。女性は皆、そうよ」

 手のひらの指輪をじっとみつめるラシードに微笑んだ。

「これはロフサーネのものでわたしのものじゃない。ロフサーネは家にいるの?」

「行方不明らしい」

「ともかく、結婚したい女性の左手の薬指にはめないとだめね」

 ラシードが指輪を握りしめたので、わたしの言うことを判ってくれたと感じたが、ロフサーネのふりをすることについて空しい気持ちにもなった。

 愛しているのかしら?

ロフサーネのこと。

 わたしに触れてくるのは、ロフサーネに似ているせい?

「見つかるといいですね、ロフサーネさん」

 黙り込んだラシードに言葉をかけるべきか悩んでいる間に孤児院の前に着いた。


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