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タマラのロマンス小説

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アラビアンナイトに煌めいて~高木裕里先生コミカライズ~

アラビアンナイトに煌めいて 2

 
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***

 金糸、銀糸が織りなす彩の中にわたしは居る。

砂漠の都市、アル・ファールド国は西洋と中東の間に位置し、アラビア語で孤独な者という意味の国名であるが、わたし、アラベラ・マーロンにとってアル・ファールド国は孤独という印象はない。

都市部の近代化に成功し、石油産出国でも知られるアル・ファールド国。

アル・ファールド国のTV放送時には必ず映し出される、国を象徴する近代的な国営高層ビルである、シャリーヤホテルの5階に位置するイベント会場は華やかなアバーヤを着た女性、ドレスを着た女性、普段着の女性が男性陣の間に交り、女性だけでも世界の国旗を並べたように鮮やかだ。

 太陽の日差しにきらめくシャリーヤホテルの窓の外の風景は、乱立するビルの合間に黄金色の砂漠が横たわり、神秘の世界が横たわっている。

165センチの背を伸ばして、青い瞳から眺める異国の地。

 シャリーヤホテルに出店した判断は正しかったと、わたしの直感は告げているし、半ば観光気分アル・ファールド国へ来た好奇心は満たされつつある。

早速、スイスシルクで制作したイスラム圏内の女性が身に着ける帽子、ヒシャブをエキゾチックな顔の女性に販売した。

18世紀、雑貨輸入で生計を立てていた祖先、アドルフ・マーロンがスイスシルクに魅せられ、スイスシルクを直輸入し、ロンドンのホテル街の一角で販売して以来、マーロン家はシルクの中でも特にスイスシルクを主流にしたシルク雑貨の販売を続けてきた。アドルフ・マーロンのイニシャル、AMを元にしたオリジナルシルクスカーフは定番になっている。

19世紀に蚕が病で激減した時期も苦労の末に乗り越え、細々と店は続き、現在、祖父のカルロとわたしが経営している。

両親は店を継がず、全く別の仕事をしていて、今は引退してスペインにいるが、わたしは両親とは違い、店に愛着を持っている。

幼少期頃のわたしはカルロの後を追って背中に飛びつき、抱っこしてもらい、レジの横で並んでおしゃべりすることが当たり前の日々だった。

“いいかい、アラベラ。これはマーロン家の家訓だ。
 
 大きな瞳を見開いて良く聴けよ。

蚕は唯一、人間に飼い馴らされ、人間の役に立っている虫だが、独りで生きる術を忘れている。

人間である我々は蚕のように誰にも飼われてはいけないよ。“

わたしの耳元で囁いたカルロの家訓はいつも忘れない。

 ストッキングや靴下、ネクタイやスカーフの滑らかで、柔らかく、何層にも模様がある絹の美しさは息を呑むほどで、新しい商品を入荷する度に、カルロの開ける段ボール箱をわくわくしながら覗いていた。

 海の合間に浮かぶものと海底に映るもの。

 スイスシルクは何層もの彩を一枚の布で表現出来る。

18世紀の頃、盛隆を極めたスイスシルクも時代を超えて、現在では店の売り上げの利益も日々の生活費と同じくらいにまでに下がったが、1年前に特定の顧客がついてからは、かなり裕福になった。

 アラブ系の執事、ナジム・サービトと髪の毛を布で覆った気品溢れる夫人が偶然来店し、夫人がこの店にヒシャブは置いてないの?と聞いたことがヒシャブ制作の始まりで転機だった。

 ヒシャブとはアラブ圏内の女性が頭に覆う布で、黒い布が主流の国や公式の場以外はカラフルな布で頭を覆う国など、様々な文化がある。

ヒシャブの代わりにスカーフで髪の毛を覆うときもあるからと、スカーフやシルクの肌着や下着を大量購入してくれたので、勢いで次回来店時はヒシャブも作りますって宣伝してしまい、AMのロゴマークのついているスカーフを元にヒシャブを作って貰い、店に置いた。

 夫人の執事のナジムが買い物を代行するようになり、そのヒシャブをいつも購入してくれ、アル・ファールド公国の催事に出店してみないか?と申し出てくれた。疑いながらも承諾したけれど、シャリーヤホテルに問い合わせると、紹介してくれた催事は行う予定だし、出店に際する書類も正規のものだった。

「我が国は男性上位の国でインターネットを扱える女性も少ない。だけど、いい方向に変わりつつあるし、顧客を掴んでネット販売すれば、シルク直輸入店アドルフ・マーロンも安泰ですよ」

 そう言いながら、後日、英語版の書類を送付してくれたナジム。ここまでして頂いていいのだろうかと思いながらも、ミスター・ナジムの大量購入で貯金が出来るようになったのは事実だし、売上関係なく、思い切って初の海外出張販売に乗り出した。

 輸送した荷物も滞りなくホテルの倉庫に着き、6日間開催されるイベントに挑む。

 華やかな女性が時折、売り場の前を通り過ぎるけれど、アル・ファールド国の男性と海外観光客が主である。

ホテル内に劇場、屋上やホテルの全面には広大なプール、5階のイベント会場の下は全てショッピングモールになっている。吹き抜けのビルの5階のイベント会場から1階を見下ろすとホテル内に川が流れ、ここだけで観光が楽しめるようだ。

天上には豪華なシャンデリア、床には紅い花模様の絨毯。クリーム色の壁面の上部には青色のタイルに金色のコーランの文字が装飾されているアラビアの風情たっぷりの空間。

 ヒシャブのみならず、高級シルクのランジェリーを男性達が買い、男性達が客の大半を占めている。妻や家族にランジェリーをまとめて買う姿に驚きを隠せなかったが、アル・ファールド国では女性は家の中に居るという文化で、買い物は男性の役目らしい。

男性が護衛に着くか、職を持っている女性しか外出しないようだ。

 ミスター・ナジムの雇い主の女性も来店は一回きりだし、アル・ファールド国の女性は不自由なのかも知れない。

 それは飼われた蚕のようなものなのだろうか?

 11時前になると、妻や娘のために買い物をする男性の列が出来た。安いとはいえないスイスシルクをまとめて購入している。

 嬉しそうな表情のそれを見る限り、アル・ファールド国の女性は幸せなのかも知れないと思い直した。

午後になり、店を一端閉めて昼食を食べに行こうか思案した。異国での販売は想像以上に楽しく、あっという間に時間は過ぎた。警備員が常時巡回していることや、イスラム圏の窃盗は手首を切り落とされるという刑罰があるので、商品を置いて休憩に行ってもよかったが、商品が売れているので、このまま販売しようと決めた。

 その決断がトラブルの元になるとは全く想像も出来なかった。

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