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タマラのロマンス小説

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 海運王の娘 7 海運王の娘 9
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海運王の娘~サン・テロス公国物語外伝1~

海運王の娘 8

 
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「アレクシス」

「君は問題が起きた時に逃げるのか?」

「解決しない問題もあるわ」

「解決出来るよ、君はもう独りじゃない」

 はっとして彼を見上げると、彼がわたしを抱きしめたままエレベーターが閉まった。

「あの、5階がわたしの部屋なの。まずは話し合いましょう」

 エレベーターのボタンを押したわたし。熱い瞳に絡まれたわたしは所在なく、彼の唇をみつめると、彼の唇はわたしの唇に重なった。

 もしも、わたしの全てを彼に委ねることが出来るのなら、わたしは生まれ代われるのだろうか?

 このキス以外、何もかも忘れたくなる感覚。

 アレクシスの優しさに甘えている。

 家同士の結婚であれば、姉と妹も居るのにどうしてわたしなの?

 エレベーターが5階に着いたと同時に彼の唇がわたしから離れる。

「僕が結婚相手だと不服なのか?」

「わたし、すぐには決められない」

「これからの人生の方が長い。僕のことはゆっくりと知ってくれればいい」

「本当?」

 わたしの部屋は人を感知して仄かに間接照明が光り、漏れる光が寄り添うように降り注ぐ。地中海を臨む窓辺、リビングルームには白い刺繍のソファが並び、ギリシャ刺繍の施されたクッションを置いている。ギリシャ神話を模したタイルの床を歩き、ソファに座るよう促すとコーヒーを勧めた。

 リビングルームの横にある小さなキッチンの引き出しから銅製の小鍋を出し、お湯をわかすと彼がわたしの横へきて、不思議そうな表情でわたしの顔を覗き込んでいる。

「君がコーヒーを作るのか?」

「ええ、そうよ。お菓子は頼むのよ」

 小鍋に水と砂糖とコーヒーの粉を入れてよくかき混ぜ、小さなカップに入れると壁に掛けてある電話の内線に連絡する。

「いつものお菓子を2人分お願いします」

 アレクシスをみつめると微笑みながら説明した。

「夕食を食べないと執事達が心配して、いつもお菓子を用意するの。いつまで経っても小さな子供のようね。安心して、すぐにこのテーブルに並ぶわ」

 エレベーターが開くとメイドと執事が入り、銀色のカートに乗ったお菓子を次々とテーブルの上に並べている。一礼をして去っていく際にありがとうと返事をすると、嬉しそうな表情で去って行った。

「わたしが夕食の席を立った時から準備していたのよ。頼まないと申し訳ないわ」

「そうなのか」

「そうよ。初めてこの小鍋を買ってコーヒーを作った時のあの人達の反応!火は危ないとか、洗いものはわたし達がします!なんて言うから説得するのに必死だったの。しかもすぐにお父様に報告されちゃう」

 アレクシスと向かい合わせでソファに座り、コーヒーと甘い砂糖菓子を一口かじった。

「いつも腫れもののように扱われてきたの。だけど、執事もメイドも仕事だから尊重しないといけないこともある。今夜はわたしが怒って席を立ってしまったから仕事を増やしてしまったわ」

「気にしなくても構わない。君は人間だから怒るのも自然の現象だ」

「哲学的なことを言うのね」

 白く小さなコーヒーカップを包み込むようにして持つ。ここはわたしの楽園なのか、檻なのか。

 スーツの上衣を脱いでネクタイを緩めている彼は疲れているようで、わたしは昨夜のことを謝ることにした。

「昨夜はすまなかったわ。酔っぱらったわたしを介抱してくれただけなのに、婚約するはめになるなんて」

「僕が望んだことだ、君を妻にすると」

「正確にはラティス家の娘の誰かでしょう」

「妻にすると決めたのは君だけだ」

 どうして?なんて怖くて聞けなかった。オリーブのネックレスが結び付けてくれたのかしら。不安になるとこのネックレスを握りしめる。メロディの先祖が代々、身に付けてきたこのネックレスは色あせているが、銀をクロスで拭くくらいに留めている。銀の退色は歴史と捉えられていて、クロスで拭くくらいの簡単な手入れのみが基本である。

 わたしの先祖ではないのにこのネックレスに頼ってしまう。

「婚約は明日の朝の朝刊に載る」

 決定事項なのね。ここ数日で扱いにくい性格だって気付かなかったの?ステファノプロス家がよほど大切なのだわ。

 それでいいの?アレクシス。

 トレイの上のお菓子を一つにまとめて食器を下げるとソファに座っている彼が手を伸ばしてあくびをしたときに、肩の音が鳴ったので、もしや、と思い後ろから両手で肩に触れた。

「アフロディテ?」

「やはり、肩が凝っているわね」

 職業意識が芽生え、甲骨の下から凝りをほぐしていくと、彼の吐息がセクシーに漏れる。頬を赤らめても彼は後ろを向いているので気付かない。

 男性の身体は女性よりも硬く力もいるけれど、彼が喜んでくれたら嬉しいし、彼に触れると淫らな気持ちになる。

 アレクシス・・・逃げ出すことに慣れたわたしを初めて止めてくれた人。

 結婚を簡単に決めていいのかしら?

 誰からも一番には愛されていないと、愛に飢えていたわたしが家同士の結婚を受け入れようとするなんて。

 偶然が重なって結婚するなんて世間ではよくあることなのかしら?

 魅力を感じたから結婚してもいいなんて思い始めたに違いない。少しだけ癖のある黒髪にも触れてみたくなり、提案した。

「頭もマッサージするわ。ベッドで横になって」

「ベッドでは別のことをしたい」

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