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タマラのロマンス小説

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海運王の娘~サン・テロス公国物語外伝1~

海運王の娘 6

 
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                        ***

「遅れちゃったわ、メロディ」

 乾燥機の中から、制服を出して着替える。バスタオル、タオルも開店前に畳まないといけないとあわてたが、それらのものはきちんと畳まれていた。

「その、ごめんなさい」

「いいのよ。いつも早く来て畳んでくれていたのだから。今日はどうしたの?昨日と同じドレスを着て」

「これは・・・」

 朝、起きたらホテルのスイートルームに居たの。横にはバスローブ姿のアレクシス・ステファノプロスが眠っていて。酔っ払ったわたしを介抱してくれたと解釈したけれど、なんてメロディに話せる?あくびを噛み殺しながらアフロディテは話を続けた。

「髪を三つあみにしないといけないわ」

 二日酔いで頭がずきずきする。ワインの飲みすぎが原因ね。髪の毛を編みながら考えるのは昨夜のこと。

「カモミールティを作ったわ」

 マグカップにたっぷりと注がれたカモミールティの香しい匂い。二日酔いってメロディにはすぐ分かるのね。カモミールティを飲みながら考えた。お父様の再婚は反対してない。素直じゃないから口では反対するけれど、本音はああゆう優しい女性をもっと早く見つければ良かったのよ、というのがわたしの気持ち。

 急に紹介しないでお昼の電話で話してくれれば動揺も軽減されたはず。娘が奪われた感じがする!と怒っていたけれど、お父様がアレクシスを責める権利はない。

 大体、お父様が身勝手なのよ。娘が働いたお金でディナーを計画していたのに、断りもなくアマンダを連れてくるのがいけない。

 そしてアレクシス、昨夜は彼も酔っていたので、求婚中というのはその場で話した嘘。泣いているわたしを見て放って置けなかったなんて優しい性格をしている。

 堂々とした彼の姿が何度も頭の中を駆け巡った時にメロディから提案された。

「今日からあなたにはカウンセリング業務を任せるわ」

「いいの?嬉しいけれど、わたしに出来るかしら?」

「わたしがオリーブの横で座って話を聞いているから大丈夫よ」

 カウンセリングシートの質問は、メロディがカウンセリングしている様子を聞きながら店の準備をしているので、出来るように頑張らないと!と気合を入れた。


 初出勤した日は洗濯機や乾燥機の使い方が分からなかったり、掃除機の使い方が分からなかったりしてメロディを困らせた。

 ジーンズに白のカッターシャツを身に付けたミス・ニコラスは栗色の髪を肩まで伸ばしたエレガントな印象の女性で頬が赤く染まっている。慌てて来店したのかしら?いいえ、それはミス・ニコラスのことではなくわたしのことよ、なんて思いながらカウンセリングを進める。

「身体の具合はいかがですか?」

「健康です。肩がこっているくらいで」

「ストレスはありますか?頬が赤いので興奮しているように感じましたが」

「分かります?アフロディテ・ラティスのせいよ!アレクシス・ステファノプロスと交際中なんて信じられない」

 えっ!どういうことなの?目を見開いてミス・ニコラスを見返す。

「今朝の社交欄の見出し一面に書かれていたわ。写真にはアフロディテ・ラティスを抱きかかえたアレクシスの姿、あれは交際確定ね」

「嘘でしょう!」

「あなたもアレクシスのファン?わたし、ステファノプロス社の受付をしていて、アレクシスが通る度に目の保養をしているのよ。いいえ、正確にはステファノプロス社の女性全員が彼のファンと言ってもおかしくないわ」

「交際なんてしてないわ」

「あなたもそう思いたいのね」

 いけない、今はオリーブだったのに、うっかり素になっちゃったわ。会話に違和感がないのが奇跡のよう。それにしても、どういう内容の記事が載っているのかしら。パパラッチは巧妙で写真を撮られた事実にも気付かないことが多々ある。“ラティス姉妹!各国のCEO達を囲んで”という記事が最近の記事だけれど、特定の男性と噂になるのは初めてだわ!

「そろそろ施術しましょうか?ミス・ニコラス」

 わたしの隣でにっこりと微笑むメロディ。もう少しでわたし、アレクシスのファンではありませんけど!と反論するところだった。

 どんな記事が載っているにせよ、何にもなかったのだから。

 威厳を背負ったアレクシスが風を切って、あの長い脚でオフィス内を颯爽と歩く。肩で風を切る度に女性従業員達は振り返り、彼の姿に憧れる。

 ものすごく腹が立つのはどうしてだろう。

「オリーブ、後で話を聞くから今は集中して」

 カウンセリングシートの問診の記入は途中までで止まっている。自分のことに集中して仕事を失敗してしまった。メロディは身体に触れただけで大概のことは理解しているようなのでどうにかなるのは知っているけれど気まずい。

 カウンセリングシートはただのコミュニケーションツールみたい。

 プロって凄いとメロディと一緒に仕事する度に驚く。

 腰のマッサージをメロディがしている時に、同時に足の裏から膝にかけてわたしもマッサージする。

 大好きなメロディのリズムに合わせて。

「アシスタントのオリーブさん、今日はありがとう。あなたも同じアレクシスのファンで気に入ったわ」

「・・・ありがとうございます」

 ミス・ニコラスの施術がことのほか長く感じられた後、挨拶も済み、ミス・ニコラスはエステサロン、ダンデライオンから去った。

「メロディ、その先程は申し訳なかったわ」

「カウンセリングシートのこと?構わないわ。それよりも休憩の合間に今朝の新聞を購入した方がいいかも。わたし、笑いをこらえるのに苦労したの。アフロディテ・ラティスは目の前にいますって教えたいくらい!」

「そうね、気付かれなかったけど危なかった。メロディが途中で止めてくれたから助かったのよ」

 新聞の内容を確認した方がいい、そこには嘘しか書かれていないはず。社交欄に書かれていることは大げさで目を通すことなんてないけれど、自分が載っていれば話は別だ。

制服のまま駆け足で新聞を買いに行く。行き交う人々は誰もわたしがアフロディテ・ラティスだとは気付かない。着せ替え人形のように、毎日、ドレスを着て生活していると世間では認識されている。

 勤務中はオリーブという名前。

 生身の温かな血が通っているという実感があり、この時間だけがわたしを幸せにしてくれる。
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