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タマラのロマンス小説
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海運王の娘~サン・テロス公国物語外伝1~
海運王の娘 4
***
「お父様、その方は?」
「アマンダ・ブリストル。彼女は僕のエンゲージメイトつまり婚約者だ」
柔らかい微笑みを私に向ける、お父様の隣に座る女性。30代後半のような外見をしている彼女から感じることは愛に満ち溢れ、優しく、穏やかで、炎のように燃える瞳でお父様を包み込み、お父様の方は・・・。
「わ、わたし、化粧を直して・・・失礼します」
どうしよう。お父様が女性を連れてくるなんて初めてだわ。突然のことで心の準備が出来ていない。アマンダ・ブリストルはサン・テロス公国の王妃、カテリーナの母親でアレクサンダーとカテリーナの結婚式で会った。いつの間に知りあって交際することになったのだろう。
きっと、わたしの誕生日に欠席したのも彼女が理由だったのよ。
今、瞳に映ったお父様の姿は、いつものお父様でなく、男の姿だった。
今夜だけはお父様を独占出来ると喜んでいたけれど、諦めないといけない。
物心付いた時からそうであること・・・お父様がお母様を亡くして以来、その愛情の殆どは妹のマリアに注がれていること。愛情が獲得されたと実感されないまま、25年が過ぎたこと。
そして、今、ここでアマンダがお父様の愛を得たこと。
それなりに愛されてはいるけれど、一番、選ばれて、愛されている娘には程遠い。
一度でもいい。誰よりも選ばれて愛されることを夢みていた。
いい加減にしなさい、わたしは25歳の大人でしょう!
いつまで経っても最も愛されていないという事実に直視出来ない。
自分に言い聞かせ、方向も分かないまま足早に歩いていると誰かにぶつかった。
「すみません」
「アフロディテ、どうして泣いている?」
見上げるとそこにはアレクシス・ステファノプロスが居た。ビジネスディナー中なの?ここはアテネ屈指の高級レストランだから、居てもおかしくはない。
「・・・説明できないわ」
そっと彼がわたしを抱きしめる。広い肩幅の彼に収まったわたしはこの胸の中で泣いてしまいそうになるのを我慢した。
「ミスター・ステファノプロス、わたしの娘、アフロディテとはどんな関係だ!」
驚いて振り返るとそこにはお父様が怒りの形相で立っていた。立ち去るのに夢中で個室のドアを開けっぱなしにしていたのだわ。
「ミスター・ラティス。僕はアフロディテに求婚中です」
それは断ったはずよ!と反論する気力もなく、彼に肩を抱かれたまま、彼に促され、個室の椅子に並んで座った。
明らかに取り乱しているわたしとお父様。
やけに落ち着いている彼は淡々とメニューを読んで、何事もなかったように微笑みながらアマンダやわたしに話しかけ、ワインを注文している。
「僕に断りもせず、娘に求婚するなんて」
「ティミー、落ち着いて。大事な娘が彼を連れてきたことで動揺しているの?愛する娘が奪われた気持ちになるのね」
アマンダの言葉にわたしの幻惑が絡んだ。お父様がわたしを愛している?食前のワインを飲み干すと、もう、どうなってもいいという気持ちが芽生えてきた。
「お父様と同様、わたしが誰と交際しても自由よね」
身体を預けるかのように、彼にもたれると25歳でも反抗するのには遅すぎないと感じて、ワインを追加した。
焦ったお父様は色んな事を彼に聞くけれど、彼は淀みなく返事をする。ビジネス談義もなされたが、彼の意見は的を射ているようで新たな取引が次々と決定されて行った。
「商談は成立してもいいが、娘は簡単に嫁がせない。第一、僕は認めない!」
「ティミー、素直に喜べないなんて。まずはお互い、名前を呼び合うところから始めたらどうかしら」
「無理だ。父親として娘を愛している。まさしく奪われるという感覚だよ」
それなりにわたしも父親に愛されているのだろうか?
誰と交際しようが関心を示さないと決めつけていたけれど、これ以上ないというくらい完璧な彼に猛反対している。
食後のデザートを食べ終えると、彼は余裕の表情で語った。
「詳しい取り決めはまた後日。ディミトリオス、今日は感謝しています」
「僕の方こそ、感謝していますよ、ミスター・ステファノプロス」
すっと立ち上がり、アマンダと共に立ち去ったお父様、顔は引きつっている。大胆な彼の言動に意見した。
「アマンダの提案だけど、ディミトリオスと呼ぶのは早すぎない?」
「ティミーより、ましだろう」
くすくすと笑うわたしに彼は微笑み返してくれた。
「いつもそういう風に笑顔ならいいのに」
「ミスター・ステファノプロス、今夜はありがとう。嬉しかったわ。恋人のふりをしてくれて」
「恋人のふり?いや、君に求婚中だよ。君より美しい人は居ない」
外見のこと?先週は家柄がどうとか言っていた。金色の髪が好きとかかしら。色んな髪の女性を連れているし、出会ったばかりの彼のことは良く分からない。
「わたしはお断りしたはず・・・理由は先週話したはずよ」
立ち上がるとふらつき、彼の方へ身体が傾くのを防ごうと身体を動かした時、頭がふらふらし、よろめいて転倒しそうになった。
「大丈夫か?アフロディテ」
大丈夫かと問われた時、意識を失い赤いカーペットの絨毯がかすんで消えた。
「お父様、その方は?」
「アマンダ・ブリストル。彼女は僕のエンゲージメイトつまり婚約者だ」
柔らかい微笑みを私に向ける、お父様の隣に座る女性。30代後半のような外見をしている彼女から感じることは愛に満ち溢れ、優しく、穏やかで、炎のように燃える瞳でお父様を包み込み、お父様の方は・・・。
「わ、わたし、化粧を直して・・・失礼します」
どうしよう。お父様が女性を連れてくるなんて初めてだわ。突然のことで心の準備が出来ていない。アマンダ・ブリストルはサン・テロス公国の王妃、カテリーナの母親でアレクサンダーとカテリーナの結婚式で会った。いつの間に知りあって交際することになったのだろう。
きっと、わたしの誕生日に欠席したのも彼女が理由だったのよ。
今、瞳に映ったお父様の姿は、いつものお父様でなく、男の姿だった。
今夜だけはお父様を独占出来ると喜んでいたけれど、諦めないといけない。
物心付いた時からそうであること・・・お父様がお母様を亡くして以来、その愛情の殆どは妹のマリアに注がれていること。愛情が獲得されたと実感されないまま、25年が過ぎたこと。
そして、今、ここでアマンダがお父様の愛を得たこと。
それなりに愛されてはいるけれど、一番、選ばれて、愛されている娘には程遠い。
一度でもいい。誰よりも選ばれて愛されることを夢みていた。
いい加減にしなさい、わたしは25歳の大人でしょう!
いつまで経っても最も愛されていないという事実に直視出来ない。
自分に言い聞かせ、方向も分かないまま足早に歩いていると誰かにぶつかった。
「すみません」
「アフロディテ、どうして泣いている?」
見上げるとそこにはアレクシス・ステファノプロスが居た。ビジネスディナー中なの?ここはアテネ屈指の高級レストランだから、居てもおかしくはない。
「・・・説明できないわ」
そっと彼がわたしを抱きしめる。広い肩幅の彼に収まったわたしはこの胸の中で泣いてしまいそうになるのを我慢した。
「ミスター・ステファノプロス、わたしの娘、アフロディテとはどんな関係だ!」
驚いて振り返るとそこにはお父様が怒りの形相で立っていた。立ち去るのに夢中で個室のドアを開けっぱなしにしていたのだわ。
「ミスター・ラティス。僕はアフロディテに求婚中です」
それは断ったはずよ!と反論する気力もなく、彼に肩を抱かれたまま、彼に促され、個室の椅子に並んで座った。
明らかに取り乱しているわたしとお父様。
やけに落ち着いている彼は淡々とメニューを読んで、何事もなかったように微笑みながらアマンダやわたしに話しかけ、ワインを注文している。
「僕に断りもせず、娘に求婚するなんて」
「ティミー、落ち着いて。大事な娘が彼を連れてきたことで動揺しているの?愛する娘が奪われた気持ちになるのね」
アマンダの言葉にわたしの幻惑が絡んだ。お父様がわたしを愛している?食前のワインを飲み干すと、もう、どうなってもいいという気持ちが芽生えてきた。
「お父様と同様、わたしが誰と交際しても自由よね」
身体を預けるかのように、彼にもたれると25歳でも反抗するのには遅すぎないと感じて、ワインを追加した。
焦ったお父様は色んな事を彼に聞くけれど、彼は淀みなく返事をする。ビジネス談義もなされたが、彼の意見は的を射ているようで新たな取引が次々と決定されて行った。
「商談は成立してもいいが、娘は簡単に嫁がせない。第一、僕は認めない!」
「ティミー、素直に喜べないなんて。まずはお互い、名前を呼び合うところから始めたらどうかしら」
「無理だ。父親として娘を愛している。まさしく奪われるという感覚だよ」
それなりにわたしも父親に愛されているのだろうか?
誰と交際しようが関心を示さないと決めつけていたけれど、これ以上ないというくらい完璧な彼に猛反対している。
食後のデザートを食べ終えると、彼は余裕の表情で語った。
「詳しい取り決めはまた後日。ディミトリオス、今日は感謝しています」
「僕の方こそ、感謝していますよ、ミスター・ステファノプロス」
すっと立ち上がり、アマンダと共に立ち去ったお父様、顔は引きつっている。大胆な彼の言動に意見した。
「アマンダの提案だけど、ディミトリオスと呼ぶのは早すぎない?」
「ティミーより、ましだろう」
くすくすと笑うわたしに彼は微笑み返してくれた。
「いつもそういう風に笑顔ならいいのに」
「ミスター・ステファノプロス、今夜はありがとう。嬉しかったわ。恋人のふりをしてくれて」
「恋人のふり?いや、君に求婚中だよ。君より美しい人は居ない」
外見のこと?先週は家柄がどうとか言っていた。金色の髪が好きとかかしら。色んな髪の女性を連れているし、出会ったばかりの彼のことは良く分からない。
「わたしはお断りしたはず・・・理由は先週話したはずよ」
立ち上がるとふらつき、彼の方へ身体が傾くのを防ごうと身体を動かした時、頭がふらふらし、よろめいて転倒しそうになった。
「大丈夫か?アフロディテ」
大丈夫かと問われた時、意識を失い赤いカーペットの絨毯がかすんで消えた。
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