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タマラのロマンス小説
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海運王の娘~サン・テロス公国物語外伝1~
海運王の娘1
海運王の娘
***この物語は海運王の決断、アマンダとディミトリオスが結ばれた後のお話です。ラティス家の次女、アフロディテがヒロインです。***
オリーブの実が銀色の枝の先に実っている。たわわな実は豊穣の印、木々は幸せを歌うかのように並び、大地に根ざしている。
わたしの名前はオリーブ。
幸せを約束された名前。
それは、わずかな時間のかけがえのない名前。
***
「アフロディテ、お父様は誕生日会を欠席ですって」
「本当なの?」
「あなたの25歳の誕生日会なのに。誕生日プレゼントは預かってきたの」
「そう、残念だわ」
姉、クレオパトラ・ラティスから深紅のポルシェの鍵を受け取ったわたしに複雑な感情がどっと押し寄せてきた。
自分で車を運転したい、それ以上にSP達がわたしの側に居る時間を無くしたいという希望があり、毎年、誕生日のプレゼントとして車を買って欲しいと父親にねだっていた。
運転は危ないからと毎年反対されていたが、今年になってようやく車を買ってくれた。
いつもわたしはその意味を考えてしまう。
父、ディミトリオス・ラティス、ギリシャ屈指の海運王。
海運王の娘、アフロディテ・ラティスのわたし。
ホテル会場を貸し切りにして行なわれる誕生日会。ラティス家の真ん中の娘で5歳年下のマリアも誕生日会には欠席している。お父様の仕事を手伝っているマリアは元々、わたしの誕生日会には興味がない。
正確には、特定の人物が参加しない誕生日会は興味がないということだ。
「アフロディテ、どうしてそんなネックレスを付けているの?」
「これは・・・・・・」
仲のいい姉、クレオパトラこと、クレオに返事をしようとしてためらった。
父の富と権力を狙い、大勢の男性が群がる誕生日会。クレオはチェリーレッドのドレスに身を包み、わたしはエーゲ海ブルーのドレスでパーティー会場の中央に立っている。
長く黒いまっすぐな肩までの髪のクレオに対し、わたしは金色の柔らかな髪を伸ばしている。身体の曲線の美しさを引き立てる、デザイナーズブランドのドレスは歩くたびに優美に揺れるはずだとクレオは誇らし気だけれど、わたしにとってはどうでもいいこと。
もし、わたしがラティス家の娘でなければ、この男性達は群がってこないだろう。
大勢の男性に囲まれて不安な気持ちになるが、口角を上げて笑みを作る。
震える指先でネックレスを握りしめると、幾分、心が落ち着いてきた。
***
アテネの真珠こと、ラティス家の娘、クレオパトラかアフロディテを手に入れた者はギリシャを制する。そういう噂はギリシャの全域で立っているが、紛れもない事実である。
アレクシス・ステファノプロスは二人の娘を観察し、アフロディテを目指して真っ直ぐに歩き始めた。
ショッピングの好きな娘とエステの好きな娘、などと陰で呼ばれる二人だが、エステの好きな娘、アフロディテのネックレスを見た時に彼女にしようと決めた。
金色の髪、すみれ色の瞳、透けるように白い肌。
ラティス家の娘でなくても、アフロディテの容姿なら微笑みだけで富豪と結婚出来るだろう。
群がる男達を避け、驚きの表情を浮かべているアフロディテの目の前に立った。
父の命令がなくてもラティス家の娘と結婚するつもりだった。
それ以外に選択肢はない。
「ミス・ラティス。僕と踊って頂けませんか?」
手を取り、ダンスを申し込むと、深みのあるすみれ色の瞳は困惑している。
「自己紹介もなく手を取るなんて無礼ではありません?」
周囲に群がる男性達が同時に僕を紹介し始める。僕の名前くらい知っているだろう。話をしたことはなくてもパーティー会場ではよく出会う。
「アレクシス・ステファノプロスです」
「わたしがよく見かけるミスター・ステファノプロスはいつもパートナーがいますけ
ど」
フェロモンの匂い、アレクシスから放たれるそれは植物よりもはるかに強く、何者も凌駕する男性らしい香り。黒い髪、黒い瞳の磁力にアフロディテの心は危機を覚えた。
185センチの身長、浅黒い肌、広い肩幅、その全てが雄々しく、その姿を見ただけで女性の良識を奪ってしまう、それがアレクシス・ステファノプロスだと周囲の女性達から耳にする。
今まで一度もダンスを申し込んだことがない癖に、今夜、わたしをダンスに誘うなんてどういうつもりなのかしら?
手のひらが汗ばみ、不信感が募る。
「今夜は一人でここへ来た。今夜も、今後も君にしかダンスを申し込まない」
「どうして?」
あっけに取られたわたしと怜悧な瞳でわたしを刺すアレクシス。引き潮のように周囲の男性達が去っていく。パーティーのたびに、礼儀正しく申し込まれた男性から順番にダンスをしているのに、今夜はそうじゃないなんて。
潮の香りのする湿り気の帯びた風を肌に受け、身体が熱くなり湿ってきたことや、ダンスをせざるを得ない状況に不安が募る。よくパーティー会場で会うというのは正確な表現ではなくむしろ控え目な表現だ。
会話をしたことはないが目が合う。その度に彼がわたしを侮蔑していると感じた。アフロディテ、お前はいつも男達に囲まれてさぞご満悦なのだろうと。瞳から放たれる訴えは強く、その場で卒倒しそうになる時もある。
あながち全部が嘘ではない。パーティー会場でわたしは幻想を求めている。
この男性達の中で独りでもラティス家の娘ではなく、ただの女としてわたしを愛してくれる人が居るのだろうか?ラティス家のラベルが剥がれても、この男性達はわたしに声をかけることはあるかしら?
あなたはどうなの?
アレクシス・ステファノプロス。
***この物語は海運王の決断、アマンダとディミトリオスが結ばれた後のお話です。ラティス家の次女、アフロディテがヒロインです。***
オリーブの実が銀色の枝の先に実っている。たわわな実は豊穣の印、木々は幸せを歌うかのように並び、大地に根ざしている。
わたしの名前はオリーブ。
幸せを約束された名前。
それは、わずかな時間のかけがえのない名前。
***
「アフロディテ、お父様は誕生日会を欠席ですって」
「本当なの?」
「あなたの25歳の誕生日会なのに。誕生日プレゼントは預かってきたの」
「そう、残念だわ」
姉、クレオパトラ・ラティスから深紅のポルシェの鍵を受け取ったわたしに複雑な感情がどっと押し寄せてきた。
自分で車を運転したい、それ以上にSP達がわたしの側に居る時間を無くしたいという希望があり、毎年、誕生日のプレゼントとして車を買って欲しいと父親にねだっていた。
運転は危ないからと毎年反対されていたが、今年になってようやく車を買ってくれた。
いつもわたしはその意味を考えてしまう。
父、ディミトリオス・ラティス、ギリシャ屈指の海運王。
海運王の娘、アフロディテ・ラティスのわたし。
ホテル会場を貸し切りにして行なわれる誕生日会。ラティス家の真ん中の娘で5歳年下のマリアも誕生日会には欠席している。お父様の仕事を手伝っているマリアは元々、わたしの誕生日会には興味がない。
正確には、特定の人物が参加しない誕生日会は興味がないということだ。
「アフロディテ、どうしてそんなネックレスを付けているの?」
「これは・・・・・・」
仲のいい姉、クレオパトラこと、クレオに返事をしようとしてためらった。
父の富と権力を狙い、大勢の男性が群がる誕生日会。クレオはチェリーレッドのドレスに身を包み、わたしはエーゲ海ブルーのドレスでパーティー会場の中央に立っている。
長く黒いまっすぐな肩までの髪のクレオに対し、わたしは金色の柔らかな髪を伸ばしている。身体の曲線の美しさを引き立てる、デザイナーズブランドのドレスは歩くたびに優美に揺れるはずだとクレオは誇らし気だけれど、わたしにとってはどうでもいいこと。
もし、わたしがラティス家の娘でなければ、この男性達は群がってこないだろう。
大勢の男性に囲まれて不安な気持ちになるが、口角を上げて笑みを作る。
震える指先でネックレスを握りしめると、幾分、心が落ち着いてきた。
***
アテネの真珠こと、ラティス家の娘、クレオパトラかアフロディテを手に入れた者はギリシャを制する。そういう噂はギリシャの全域で立っているが、紛れもない事実である。
アレクシス・ステファノプロスは二人の娘を観察し、アフロディテを目指して真っ直ぐに歩き始めた。
ショッピングの好きな娘とエステの好きな娘、などと陰で呼ばれる二人だが、エステの好きな娘、アフロディテのネックレスを見た時に彼女にしようと決めた。
金色の髪、すみれ色の瞳、透けるように白い肌。
ラティス家の娘でなくても、アフロディテの容姿なら微笑みだけで富豪と結婚出来るだろう。
群がる男達を避け、驚きの表情を浮かべているアフロディテの目の前に立った。
父の命令がなくてもラティス家の娘と結婚するつもりだった。
それ以外に選択肢はない。
「ミス・ラティス。僕と踊って頂けませんか?」
手を取り、ダンスを申し込むと、深みのあるすみれ色の瞳は困惑している。
「自己紹介もなく手を取るなんて無礼ではありません?」
周囲に群がる男性達が同時に僕を紹介し始める。僕の名前くらい知っているだろう。話をしたことはなくてもパーティー会場ではよく出会う。
「アレクシス・ステファノプロスです」
「わたしがよく見かけるミスター・ステファノプロスはいつもパートナーがいますけ
ど」
フェロモンの匂い、アレクシスから放たれるそれは植物よりもはるかに強く、何者も凌駕する男性らしい香り。黒い髪、黒い瞳の磁力にアフロディテの心は危機を覚えた。
185センチの身長、浅黒い肌、広い肩幅、その全てが雄々しく、その姿を見ただけで女性の良識を奪ってしまう、それがアレクシス・ステファノプロスだと周囲の女性達から耳にする。
今まで一度もダンスを申し込んだことがない癖に、今夜、わたしをダンスに誘うなんてどういうつもりなのかしら?
手のひらが汗ばみ、不信感が募る。
「今夜は一人でここへ来た。今夜も、今後も君にしかダンスを申し込まない」
「どうして?」
あっけに取られたわたしと怜悧な瞳でわたしを刺すアレクシス。引き潮のように周囲の男性達が去っていく。パーティーのたびに、礼儀正しく申し込まれた男性から順番にダンスをしているのに、今夜はそうじゃないなんて。
潮の香りのする湿り気の帯びた風を肌に受け、身体が熱くなり湿ってきたことや、ダンスをせざるを得ない状況に不安が募る。よくパーティー会場で会うというのは正確な表現ではなくむしろ控え目な表現だ。
会話をしたことはないが目が合う。その度に彼がわたしを侮蔑していると感じた。アフロディテ、お前はいつも男達に囲まれてさぞご満悦なのだろうと。瞳から放たれる訴えは強く、その場で卒倒しそうになる時もある。
あながち全部が嘘ではない。パーティー会場でわたしは幻想を求めている。
この男性達の中で独りでもラティス家の娘ではなく、ただの女としてわたしを愛してくれる人が居るのだろうか?ラティス家のラベルが剥がれても、この男性達はわたしに声をかけることはあるかしら?
あなたはどうなの?
アレクシス・ステファノプロス。
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