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タマラのロマンス小説

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 雨の日に振り向いて 1 雨の日に振り向いて 3
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雨の日に振り向いて

雨の日に振り向いて 2

 
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「髪の毛が濡れている。風邪をひいたらいけないよ」

 玄関入ってすぐに手渡された、彼の家の匂いがするバスタオルと苺色と白のストライプのロングTシャツ。

 置いてきたロングTシャツのことを気にとめていなかった。

 懐かしく感じるなんてどうかしている。

 再び家の匂いを吸い込むと、彼がスーツを脱ぎ、Tシャツとトランクス姿に着替え始めたので焦った。

 「バスルーム、借ります」

 スーツは濡れていたけれど、目の前で脱ぐことないじゃない。

 その厚かましさに腹が立った。

 何事もなかったように振る舞うつもり?

 あんなに悩んだことが簡単なものにすり替えられそうで悔しい。

 バスルームの鍵を閉めると涙をこらえた。

 心。

 わたしは、わたしの心を決められない。

 別れたはずなのに、わたしを呼び止めた彼にどうすればいいのか迷っている。

 駆け寄って抱きしめて欲しいと告げるのか、立ち去るのか。

 髪の毛をタオルでごしごしと拭きながら、心は散らかってゆく。

 苺色と白のストライプのロングTシャツと長く乱れた髪をバスルームの鏡に映す。

 パジャマに近い服装でも、帰りたくなったら帰るのよ。

 変わらず置いてあるブラシを手に取り、髪の毛をとくと怒りが募った。

 こんな状況なのに、少しでもきれいだと思われたいの?

 いいえ、身だしなみのはず。

 閉めた鍵をカチッと音を立てて回し、バスルームを抜けると、ほんのりと香しいコーヒーの匂いが流れてきた。

「どうぞ」

 差し出されたマグカップを受け取ると指先から身体の中に温かさが伝わる。

 ドリップしたコーヒーに牛乳を入れて飲むのが好き。

 コーヒーはモカではなくブレンド。

 混じって整っている味がいい。

 美味しいけれど、味わう間もないくらい、ごくりと飲み干し、マグカップをキッチンで洗う。

 “お客様”のつもりで訪れたのに、身に付いた習慣はすぐに変えられない。

 その習慣は一つではないようで、わたしの肩に手をまわし、背中からわたしを抱きしめた彼。

「理恵、何が気に入らない?それよりも」

 わたしの頭に頬を寄せて、手をわたしの身体の前で組んでいる。

「やめて、わたしたちは別れたはずよ」

 くるりと彼の方を向いたわたし。離れようとしたはずなのに、彼の匂いに包まれたわたしが抗議をするために顔を上げると、彼の唇がわたしに迫ってきた。

「だめ」

「ごめん、つい」

 つい、って何!許可が要らないと思ったのね。懐かしい彼とコーヒーの匂い。色んな豆を買ってミルで混ぜながら調合したオリジナルの匂い。

 ファーストフード店のコーヒー豆の匂いとは違い、深みがある濃厚な匂いは別れた時からずっと鼻孔に残っていた。

 簡単な料理しか作らない癖に彼はコーヒーに凝る。

 ブレンドしたコーヒーを飲む時間は、ゆるやかで優しい時間。

 彼をみつめたまま制止している。

「会えない時間が多くて別れようと思っただろう。だけど、別れられない。会える時間が増えるように努力するよ。それ以外の不満はある?」

「会えない時間が多くて、寂しかったのが理由の一つではあるわ」

 そう、もっと、重大な理由があるけれど知られたくない。

 愛している、だけではどうにもならない理由。

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