タマラのロマンス小説
愛のはざまに~桃川春日子先生コミカライズ~
愛のはざまに 11
日曜日、チャールズからわたしの家へ来ると連絡があった。土曜日、家で悩み続けたマーガレットは、セクシーな男性、アダムの方からキスしてきたとはいえ、認めたくないけど、ときめいてしまったのは事実だからチャールズと婚約破棄しようと決めた。
中途半端な状態は良くないわ。これからも友達でいてくださいって、わたしにとって都合のいい話かしら。
怒られるのか、呆れられるのか。
もう、二度とチャールズとの結婚話はでないはず。
あれだけもてるもの。きっと恋人が何人も居るのよ。ここ数年、女性と長続きした様子はないけれど、わたしに話してないだけで、彼女ナンバー2、彼女ナンバー3とかが居てもおかしくはない。
悪いのは、わたし。
レモンパイを作っていると玄関からチャールズが入ってきた。
「いい匂いだね」
「好きでしょう、レモンパイ」
きちんと話をしないといけないのに視線が泳いでいる。
「メグ、その、笑っていい?」
「な、な、何で?」
「様子がおかしいよ。悩み事があるんだね。いいよ、話して」
嘘でしょう?エスパーなの?チャールズって。焦りながらも、真実をかいつまんで話した。
「実はアダムがわたしにキスしたの。チャズのことで話があるって呼びだされて」
ニコのことも話した。水疱瘡にかかっていて、日曜日から金曜日まで面倒を看たこと。つい、勢い余ってニコがどんなに可愛い子供かまで語った。
「僕の婚約者に親しげにキスするなんて、メグ、あいつを信用してはいけないよ。それと、もう一度詳しく話した方がいいのかな?14歳の夜にあった美しい女性との出来事を」
「その話は覚えているわ」
「つまり、キスぐらいで悩んではいけないってことだよ」
「・・・・・・チャズ」
どう説明すればいのだろう。官能的で求められるようなキス。挨拶の気軽なキスだと解釈されたのだろうか?だけど、アダムがわたしのことを好きでキスしたとは断定しにくい。
「メグ、あの場所へ行こう。おいで」
あの場所ってどこだろう?
突然、あの場所と言われても思い当たらない。
悩んだまま、チャールズの車の助手席に乗ると、車は学校や通学路が見渡せる丘に着いた。
「懐かしい風景ね。家の近くなのに、学校を観るのは久しぶりよ」
湿った草木の匂い、寒い風が頬に当たると小さなくしゃみをした。チャールズが自身の身に着けていた濃紺のコートを脱ぎ、大きな石の上に敷いて座ると、わたしに並んで座るように合図する。
「ありがとう、チャズ」
横に座ったわたしの言葉はすり抜け、チャールズの目線は学校の先の、もっと遠い所にあった。
重要な話をする前触れだわ。
ここで悩んで話さない時もある。
風の匂いを吸い込み、チャールズの言葉を待った。
「昔からこの場所には独りでよく座ったよ。十歳のときに母親が出て行っただろう。ずっとここで考えてた。僕のせいで母親は出て行ったんだって」
「違うわ!お父さんの度重なる浮気が原因って、チャズは昔から言ってたじゃない」
「口ではそう言ったけど、子供は自分のせいだって思うものだよ。実際に母親の気持ちを引き留めるために何でもした。学校の成績は一番でも、家のカーテンをはさみできざんだり、時にはお気に入りのドレスも破った。結果、年の離れた妹は母親の元へ引き取られ、僕は置いて行かれた」
「・・・・・・チャズ」
隣に居たチャールズの左手を両手で包み込み、励ますように握りしめた。
「大丈夫よ、チャズはいつも自分で言うほど悪い人ではないわ」
冷たいチャールズの左手。
触れてると安心する。
チャールズと一緒に居るときは落ち着くのに、どうしてアダムと居る時は心に虫を飼ってるようにざわめくのだろう。
「ところで、アダムは本気でメグを狙ってた?」
「分からないわ」
「もし、軽い気持ちで近づいて来たら、騎士のように決闘を申し込むよ」
決闘?美女じゃないもの、そういう場面は想像出来ない。
「そうだわ、チャズ。明日から保育所の仕事が終わった後、ニコを家で預かることにしたの。アダムは退社後、ニコを迎えに来るの」
「ニコの世話をするんだね。メグらしいよ。あの憎たらしい弟妹達も、この道で双子用バギーを押して面倒を観て可愛がっていたね」
「憎たらしい?聞き捨てならないわね」
くすっと笑うチャールズに安心した。何でも話してくれたら嬉しい。機嫌の良くなったチャールズの話を聞いて家に着くと、月曜日にここへ遊びに来ると告げて帰って行った。
数年前に落ち込んだチャールズと会った時は、自分以外の誰も寄せ付けない瞳をしていた。
黒くて深い闇のような、空をみつめる瞳。
一年近く会ってなかった時だったけど、あの時も母親が去るのと同様の心の痛みがあったはず。
チャールズ。
大切な友達。
心に引っ掛かっている何かを感じたくないまま土曜日は過ぎ、日曜日も家の用事をすませながら難しいことを考えないようにしていた。
中途半端な状態は良くないわ。これからも友達でいてくださいって、わたしにとって都合のいい話かしら。
怒られるのか、呆れられるのか。
もう、二度とチャールズとの結婚話はでないはず。
あれだけもてるもの。きっと恋人が何人も居るのよ。ここ数年、女性と長続きした様子はないけれど、わたしに話してないだけで、彼女ナンバー2、彼女ナンバー3とかが居てもおかしくはない。
悪いのは、わたし。
レモンパイを作っていると玄関からチャールズが入ってきた。
「いい匂いだね」
「好きでしょう、レモンパイ」
きちんと話をしないといけないのに視線が泳いでいる。
「メグ、その、笑っていい?」
「な、な、何で?」
「様子がおかしいよ。悩み事があるんだね。いいよ、話して」
嘘でしょう?エスパーなの?チャールズって。焦りながらも、真実をかいつまんで話した。
「実はアダムがわたしにキスしたの。チャズのことで話があるって呼びだされて」
ニコのことも話した。水疱瘡にかかっていて、日曜日から金曜日まで面倒を看たこと。つい、勢い余ってニコがどんなに可愛い子供かまで語った。
「僕の婚約者に親しげにキスするなんて、メグ、あいつを信用してはいけないよ。それと、もう一度詳しく話した方がいいのかな?14歳の夜にあった美しい女性との出来事を」
「その話は覚えているわ」
「つまり、キスぐらいで悩んではいけないってことだよ」
「・・・・・・チャズ」
どう説明すればいのだろう。官能的で求められるようなキス。挨拶の気軽なキスだと解釈されたのだろうか?だけど、アダムがわたしのことを好きでキスしたとは断定しにくい。
「メグ、あの場所へ行こう。おいで」
あの場所ってどこだろう?
突然、あの場所と言われても思い当たらない。
悩んだまま、チャールズの車の助手席に乗ると、車は学校や通学路が見渡せる丘に着いた。
「懐かしい風景ね。家の近くなのに、学校を観るのは久しぶりよ」
湿った草木の匂い、寒い風が頬に当たると小さなくしゃみをした。チャールズが自身の身に着けていた濃紺のコートを脱ぎ、大きな石の上に敷いて座ると、わたしに並んで座るように合図する。
「ありがとう、チャズ」
横に座ったわたしの言葉はすり抜け、チャールズの目線は学校の先の、もっと遠い所にあった。
重要な話をする前触れだわ。
ここで悩んで話さない時もある。
風の匂いを吸い込み、チャールズの言葉を待った。
「昔からこの場所には独りでよく座ったよ。十歳のときに母親が出て行っただろう。ずっとここで考えてた。僕のせいで母親は出て行ったんだって」
「違うわ!お父さんの度重なる浮気が原因って、チャズは昔から言ってたじゃない」
「口ではそう言ったけど、子供は自分のせいだって思うものだよ。実際に母親の気持ちを引き留めるために何でもした。学校の成績は一番でも、家のカーテンをはさみできざんだり、時にはお気に入りのドレスも破った。結果、年の離れた妹は母親の元へ引き取られ、僕は置いて行かれた」
「・・・・・・チャズ」
隣に居たチャールズの左手を両手で包み込み、励ますように握りしめた。
「大丈夫よ、チャズはいつも自分で言うほど悪い人ではないわ」
冷たいチャールズの左手。
触れてると安心する。
チャールズと一緒に居るときは落ち着くのに、どうしてアダムと居る時は心に虫を飼ってるようにざわめくのだろう。
「ところで、アダムは本気でメグを狙ってた?」
「分からないわ」
「もし、軽い気持ちで近づいて来たら、騎士のように決闘を申し込むよ」
決闘?美女じゃないもの、そういう場面は想像出来ない。
「そうだわ、チャズ。明日から保育所の仕事が終わった後、ニコを家で預かることにしたの。アダムは退社後、ニコを迎えに来るの」
「ニコの世話をするんだね。メグらしいよ。あの憎たらしい弟妹達も、この道で双子用バギーを押して面倒を観て可愛がっていたね」
「憎たらしい?聞き捨てならないわね」
くすっと笑うチャールズに安心した。何でも話してくれたら嬉しい。機嫌の良くなったチャールズの話を聞いて家に着くと、月曜日にここへ遊びに来ると告げて帰って行った。
数年前に落ち込んだチャールズと会った時は、自分以外の誰も寄せ付けない瞳をしていた。
黒くて深い闇のような、空をみつめる瞳。
一年近く会ってなかった時だったけど、あの時も母親が去るのと同様の心の痛みがあったはず。
チャールズ。
大切な友達。
心に引っ掛かっている何かを感じたくないまま土曜日は過ぎ、日曜日も家の用事をすませながら難しいことを考えないようにしていた。
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